LAMU の考察 Blog『すずめの戸締まり』

新海誠監督作『すずめの戸締まり』関連情報の紹介と、本編の考察を綴る LAMU 最後のブログ

ミニ考察 ⑥⑦ 千果が話す「男の子論」と家族の反応 他

    読者の皆様、お待たせいたしました。ようやく考察記事を更新することができました。

    亀の歩みの如く鈍足ではありますが、気の赴くままに綴ってみよう、書ける処までまず書いてみよう ... という気持ちが、ちょっとずつ高まってきました!

 

※ ここからは ♪ サントラ:すずめの戸締まり ♫ を BGM に流しながらお読みください・・・ 💁

   

ちょこっと気になる一コマ ⑥    千果が話す「男の子論」と家族の反応

 愛媛に渡った鈴芽は、民宿を営む海部(あまべ) 家の娘:女子高校生の千果(ちか) と出会います。彼女が通ったという廃校の正面玄関が「後ろ戸」となり、そこから噴き出したミミズを戸締まりして地震を防いだ鈴芽は、その後イス姿の草太とともに、千果の民宿でお世話になります。あの夜更けの時間帯に、気味が悪くなりそうな立入禁止区域のバリケード手前で、千果はたった一人、鈴芽が戻るのを待っていました。「『鈴芽』っていうあの同い年のコ、いったいこんなトコ来て、何しとるん? それに急用って何なん?」「ネコ一匹捜すのに、わざわざ九州から来んやろう普通? 不思議なチビイス抱えてるわ、みかんの雪崩受け止めるとか、マジ魔法使いの域なんやけど...」

    そんな疑問を一つ一つ反芻しながら、ひたすら鈴芽が廃墟から戻るのを待った千果の様子が容易に想像できます。そんな彼女は、泥だらけの鈴芽を目にしても多くを問わず、泊まる場所は未定と答える鈴芽をわが家の旅館へと招き入れるのでした。

    まず初めに鈴芽を旅館の広い浴場へ通した千果は、その間に客用に出す夕食の御膳を、あえて自分用と鈴芽用の2人分用意しました。鈴芽の分だけ御膳を用意してしまったら、きっと鈴芽は恐縮するだろうし、この際ウチも客用の御膳で食べてみよっと! 鈴芽からいろいろ話を聴き出したいし、ウチもしゃべりたいし。そんな千果の申し入れを快く受け止めてくれた両親の人柄が垣間見えますね。ホント心優しい御家庭です !!!

    仲居姿の千果は、家族のみで行なっている配膳下膳を一通り済ました後、湯上がりの鈴芽の部屋へ御膳を運びます。そんな心遣いに感極まってくる鈴芽は、焼き魚の白身を一口頬張るや、つい涙を流してしまいます。「おいっしいぃ・・!」目頭に涙を溜めている鈴芽を見て「ええっ、鈴芽あんたちょっと、泣いとらん !?」「だって、おいしすぎて... 」ここまでストレートに感動を表してくれる鈴芽の純朴さに、心を打たれた千果も、鈴芽に対する興味・関心から「感心」へとモードチェンジしたのが、この夕食のシーンかと思われます。

    腹ごしらえを済ませた二人は、厨房作業を手伝った後に浴場の掃除に勤しみます。千果の話は作業中ずっと止まず、手も足腰も止めずに床のタイルを磨く鈴芽は、耳に入ってくる千果のリアルな彼氏話や「男の子論」に、驚き交じりの相槌を返します。

「鈴芽は、男の子と付き合うたことある?」「え、一度もないよ」「それがええそれがええ、男子なんてろくなもんじゃないけんのぉ」と嬉しそうに愚痴を言う千果には、最近付き合い始めたばかりの彼氏がいるという(小説 p.100)。この「嬉しそうに愚痴を言う」ってところで、つい深読みの触手が反応してしまう LAMU なのであります。

「自分は LINE の返信もろくにしないくせに焼きもちばかり焼いてくる」「二人きりになれる場所に行きたいと主張してくる」

    この逆のケースの元彼?がかつていたのかな... と勝手な妄想をしてみては、家族にまで昔の彼氏話を開け出そうとする千果に父親と弟が「聞きとうないわ!」と速攻で反応した背景を想像してみました。

    単純に逆パターンの男性を思い描くと「LINE の返信は直ぐに頻回に送ってくるのに、どこか心の距離を感じさせる」「二人きりになるどころか、会うことすら疎遠な雰囲気を醸してくる」

    そんな男性が脳裏に遡上しては「はて、これは遊び人の男に声をかけられた千果が、甘い言葉にそそのかせられ、学生の立場ながら駆け落ちのような行動をしたのかな」と。

    もしそうなら家族、とくに父親なら「思い出したくもない話」でしょうし、弟までも拒絶に近い反応を示すことに納得がいくわけです。

    鈴芽が千果の実家である民宿を発つとき、千果はベージュのキュロットパンツと白Tシャツ、大きめのデニムジャケット、肩掛けの大きなスポーツバッグを彼女にプレゼントしています。そのバッグには、洗濯した鈴芽の制服一式と黄色い子ども椅子の草太がすっぽり収まっていて、さりげない千果の親切な振る舞いに鈴芽は感極まるわけです。

    同い年ならではの恋バナで盛り上がるなか、鈴芽は「寝起きが悪い彼氏はキスしたら起きるで」と、はつらつとした指南を千果から受けました。千果は千果で自身のほろ苦い恋の体験談を、少し客観的な目線で鈴芽に吐露しつつ、身の丈サイズの今の恋に幸せを感じられる自分自身を改めて認識し、自らの変化を確かめたのではないでしょうか。

    あの頃の想いが残っている駆け落ち?グッズを「魔法使いの」鈴芽に託し、未練なのか追憶なのか、家族を巻き込んだ過去の一騒動を、千果は鈴芽との出会いを通して、きちんと「戸締まり」できたのかもしれませんね。

 

ちょこっと気になる一コマ ⑦    愛媛に里帰りしていたルミと幼い双子

    千果と別れて小一時間、次の移動手段を求めて、ヒッチハイクにトライしながら歩き続けた鈴芽は、古びた屋根があるバス停で通り雨を凌ぎます。掲載の時刻表がまさか廃線バスのものとは知らず、三本脚の子ども椅子の姿でいる草太に、母との想いが詰まった椅子について少しずつ口を開くのです。

    そんな折、バス停の前を通りかかった青いミニバンが、わざわざバックして戻り、鈴芽に声を掛けます。声の主は神戸市内でスナックを経営しているシングルマザーのルミ。彼女には男の子と女の子の双子がおり、愛媛の祖父母と過ごし、今は神戸の自宅に戻る車内の後部座席で眠りに落ちていました。鈴芽のバッグが気になってすぐに起きましたが(笑)。

    働きながら双子の子育てを独りで切り盛りするルミにとって、神戸から離れた愛媛の実家で一息ついて、我が子たちを束の間実親に託し、リフレッシュして再び神戸へ戻る。また始まる日常に、いざ馳せ参じる!と気合を入れたタイミングで、雨宿りの鈴芽と出会ったわけです。

    朝帰りなどやんちゃをしていた頃があったというルミにとって、保護者の元を離れて放浪の旅に出ている女子高生は、自身と重ね合わせてしまう部分があるのでしょう。そして、やがて我が子も成長し、自分やこの目の前の放浪女子高生:鈴芽のように、突然自分の前から居なくなると想像するだけで、何とも耐え難い気持ちにもなるのでしょう。

    一時は親元を離れても、血縁は切れることはない。やっぱり最終的に拠り所となるのは親元であり、故郷なんだよと、今回のテーマから私は感じました。

⇧ 小学校入学の幼い鈴芽が、やや外にのけ反って作り笑いしているのが印象に残る写真。環さんもそれを十々承知で、鈴芽の左肩を引き寄せていますね。

 

お知らせ【2025年6月13日】劇場映画『秒速5センチメートル』特報動画

   

特報動画を観る限り、原作に忠実な実写映画となる予感がします。今から非常に楽しみです。公開は10月10日からです!

 

お知らせ【2025年7月26日】次回予告

⑧ダイジンがもたらしたとされる好況の裏側

⑨新幹線乗車中に富士山を2度見過ごす鈴芽

⇧ 以上の執筆を再開していければと考えています。 掲載日の予定としては、今年 2025年10〜11月を目安に、準備を進めていく所存であります (ちゃっかり延期を繰り返しております🙇 )。 昨年は2回しか更新することがなかった本ブログを、毎日立ち寄って読んでくださっている読者様がいらっしゃることに大変ありがたくも感じ、同時に大変申し訳なくも感じております。 考察熱が高かった頃の熱量にまで達するかは別として、このまま完全にブログから離れていくのでなく、つかず離れずの現状から、少しでも考察生活への復帰に繋がるよう自らを鼓舞できればと考えております。現在0歳児の娘が夜の時間を占拠しております。

 

画像出典:すずめの戸締まり 製作委員会

動画出典:Bee Add − Open Space −

                    東宝MOVIEチャンネル

引用出典:小説『すずめの戸締まり』

 

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